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カウンセリングとは私を「治す」もの?

更新日:2023年2月7日


カウンセリングにいらっしゃる方には、


「どうやったら治りますか」

「私のやり方がダメだったんですかね」「生まれ変わることはできますか」


などと聞かれることは少なくありません



日本ではまだまだカウンセリングの敷居は低くありません。

そんな中でカウンセリングに来られたということは、すでにさんざん御自分のことを考え、こんな自分だからいけないんだとか、こんな自分ではこれからやっていけない、きちんと向き合って、まるごと自分を変えてしまわないと!というような意気込みがあったりします。


本当に今までの私がダメだったのでしょうか?

だから、今、私はうまくいってないのでしょうか?


カウンセリングを始める際に、私はわりとクライエントさんの生まれてから今までのこと(成育歴)や家族についてを、丁寧に時間をかけて聞いていきます。

そのお話を聞いた後には、


「今までのやり方が間違っていたとか、なにかが足りなかったのではということではないんだと思います。おかれた環境の中で、あなたはそこでできる精一杯を頑張って生きてきた。生き延びるために必死で身に着けてきたものは、決して間違いではなかったと思います。ただ、今こうやって、それなりにうまくいっていた方法でだんだんうまくいかなくなったのは、あなたが年齢を重ねて成長をし、あなたの置かれている環境も変わってきたのに、つい慣れ親しんだ今までと同じやり方でやっていこうと思うと、うまくいかないような感じがするんだと思うんです。」


という趣旨のことをお伝えすることが多いです。


生い立ちを語る中で、一生懸命におかれた環境に適応しようと頑張っていた自分を一緒に振り返ってもらっているのです。

そんな頑張って作り上げた自分がダメだと思うのは、何とも辛いし、しんどいものです。

これを否定して、私を生まれ変わらせる!と魔法のように変えることはカウンセリングでは望まれていません。

まずは、今までどんな経緯で私が私になっていったのか、知る必要があるし、受け止める必要があります。

人見知りであったり、人が信じられなかったり、人をひたすらに求めてしまったり、人と関わる距離感がどうにも調整できなかったり…あなたがそうなるには、それなりの理由があったはずなのです。

そして、その理由はあなたの力ではどうにもできなかったもので、そこに抗えなかった後悔や罪悪感も内包していたりします。


そういう「過程」を振り返り、自覚し、「形」していくことで、

今いる「自分」の姿が客観的に見えてくるようになります。

常に嫌いだった自分が、なんとも頑張り屋でいじらしく、愛おしいものにすら感じられるようになります。

今の自分は決して「綺麗な姿」ではないかも知れない、とてもいびつで不器用なものかも知れない、でも、私が作った「作品」なんですよね。

まずは頑張ってきた幼い私を労いたい。


そうしたら、そろそろ「大人」の私が面倒を見る番です。

常に外の世界に私の面倒を見てくれる「大人」を求めていた人も、ここまで来ると、自分のことをちゃんと見てくれて、黒い思いも汚い部分も「わかってるよ」と包み込んで、そう思ったり感じたりも仕方ないし、いいんじゃない、でもうまくやるにはこうしていこう!と提案できる「大人」は自分の中以外にはいないことに気づいていくのです。

あとは、この「大人」をどう成長させていくか。


ここまできて、ようやく今の自分の周囲が見渡せるようになります。

ずっと威圧的だったり気分屋だった母親に怯えて生きてきたけど、その母とは別に暮らしていて、物理的な距離がとれているのに、精神的な距離が未だに以前のままで、結婚した家でもリラックスできていない。

好きで一緒になったはずの夫なのに、なんだか実家にいる以上の居心地の悪さになってしまっている。

どこの職場に言っても、しばらくすると疎外感を感じてしまうし、自分なんかいらない存在だと思われてるような気がする。

等々、困っている現状は、実は過去の自分から見た周囲の人であって、正しく現実にいる「その人」を見ていないことが多いのです。

あなたが思っている、「この人はこう思っているに違いない」っていうこと、本当にその人が感じていることか確かめたことあるでしょうか?

「こうに違いない」を1つずつほぐして、確認して、修正していく作業を通して、自分の周りには、「自分」を中心としたところに人がそれなりにいてくれていることに気づくでしょう。それがあなたが作り上げてきた人間関係なのです。

改めて、過去の「思い込み」でない目で周囲を見渡して、あなたにとって大事な人たちとの関係を再構成していく…。


こんな流れが当オフィスで実施している「カウンセリング」のイメージです。

今までの私を知り、今の私を知り、新しい私にベストな方法を考えていく。

トラウマがあっても、毒親がいても、発達的な障害があっても、基本的な流れやスタイルは変わらないような気がします。

「生まれ変わる」わけじゃないことは、御理解頂けたでしょうか?

「あなた」そのものを大事にしつつ、今の環境にどんな風に関わっていけるかを一緒に考えることを目指しています。せっかく「生まれた」あなたを大事にしたい。

それにかかるお時間は、その方の「マイペース」になるんですよね。

数か月の方もいれば、数年かかる方もいらっしゃいます。

最後まで伴走することもありますし、途中でひとりで大丈夫です!と出ていかれる方もいます。

カウンセリングに「治す」って言葉は似合わないなぁと感じるのです。




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