欧米では、そもそもカウンセラーとセラピストにはしっかり住み分けがあるのですが、日本では、カウンセリングには「相談すること」としての意味だけでなく、治療計画やサービスについて説明するような意味合いがあったりします。
「カウンセリング」で検索すると、化粧品やエステ、美容院や歯医者さんなんかもヒットしますよね。
いわゆる心の問題を整理したり話し合ったりする「カウンセリング」より先に、すでにこうした「自分に合った商品を紹介する」イメージが先行してしまってるというのも、日本でのカウンセリングや心理療法の概念の普及が難しいところでもあります。
さらに、臨床心理士や公認心理師などの専門教育を受けてきた心理士は、本当は「精神療法家」である「セラピスト」と名乗りたい気持ちがあるのですが、日本では「セラピスト」にすでにスピリチュアルなイメージが先についているので、スピリチュアルとは距離を置きたい心理士は「セラピスト」とは名乗りづらい事情もあります。
日本での心理士の名称が役割によって統一されていないことからも、日本における心理学の発展には紆余曲折の歴史があることが推し量れるでしょう。
開業にあたって、ホームページ作成時に、「カウンセラー」と記載するか、「セラピスト」と記載するか、「心理士」と記載するか…ずいぶん悩みました。
自分の持っている資格からすると、「心理士」か「心理師」になるのですが、あまり身近に感じられず、役所っぽいな…としっくりきませんでした。
オリエンテーションが精神分析なので、「サイコセラピスト」や「セラピスト」という呼び方にも惹かれましたが、私の思いや憧れとは別に、「サイコセラピスト」には「サイコパス」から来るイメージ、「セラピスト」には前述したように、ちょっとスピリチュアルよりなイメージがあると感じられ、やはり使用するにはためらいがありました。
結果、あまりにも内包するイメージが大きすぎるけれど、それでも内包するものが、私の提供する心理療法とかけ離れていない「とにかく何かを人に相談する」という一般的イメージをもつ「カウンセラー」を使用することにしました。
とはいえ、心理士の資格の中で、臨床心理士は大学院を卒業、公認心理師は大学の心理学部を卒業しなければ取れない資格と比べると、「カウンセラー」とつく名称の資格は、大学などでの専門的教育が必要なく、短時間でとれるものが多いのです。心理士の観点からすると、「カウンセラー」と名乗りたくない…気持ちも湧いてくるのです。
このジレンマは、未だに私の中にくすぶっていますが、それでも、ホームページを見る方には専門家の事情なんて関係ないし、何よりも「気軽に相談に来てもらえる」をメインにするには、やはり「カウンセリング」「カウンセラー」という長い歴史をもつ名称に軍配があがったわけでした。
そういうわけで、私は「カウンセラー」を名乗っていますが、カウンセラーを選ぶ際には、その呼称だけで判断せず、どんな資格を持っているかも御確認頂けると嬉しいです。