子育てをしていると、どうしてこんなにしんどいのだろう…とか、どうしてこんなにも子どもに対してイライラしてしまうのだろう…とか思うことありませんか?
赤ちゃんが泣くのは、ただの不快通知サインだと頭では「理解」していても、どうしても我慢できなかったり、どうしようもなく焦ったり、不安にさせられたりすること、ありませんか?そこから逃げ出したくなったり、赤ちゃんのスイッチが入ったら、すぐに対処して泣き止ませるために、常に赤ちゃんの傍で待機していないといられなかったり、はたから見ると少し異常だなというほど、過敏に反応してしまうこと、ありませんか?
様々な相談を受ける中で、子育てのやりづらさには、その子の生まれ持った性格的要因だったり、障害的要素だったり、夫婦関係、家族環境要因もありますが、親御さんの話し方から推察して、時にThは、「あなた自身が同じくらいの時に、もしかしたら、とてもしんどかったり、淋しかったり、怖い思いをしたりしたのかも知れませんね。」と声をかけます。
即座に否定される方もいますが、たいていの方はしばらく逡巡します。赤ちゃんの頃の記憶は誰にもはっきりしませんし、曖昧なものですから。
それでも遠い記憶を辿って、その記憶がふわっと包まれた温かいものだったのか、ピンと緊張感の高い孤独で淋しいものだったのか、曖昧ながらもその空気感に触れるようです。
「そうかも知れません。」
もし、そうした可能性に気づかれれば、たいていの親御さんは、自分の過敏な反応が、我が子のせいでないことに気がつきます。自分が我が子を愛せていないんじゃないかという心配が、検討違いの悩みであることに気がつきます。赤ちゃんの泣き声が、自分の中の遠いざらついた記憶に触れてしまい、どうしようもなく不安になったりイライラしたりするんですね。なんせ赤ちゃんですから、他に助けを求めたり、言葉にして話したり書いたり、体を動かして発散したり、不安の昇華の仕方を知りません。全世界が真っ黒いもので覆われているような恐ろしさや孤独感を体験していたのかも知れません。ずっと昔のことで、今はそんなことないと理屈でわかっていても、原始的なあの泣き声に、そうした名前のつかない不安が掻き立てられても仕方がないことだと思います。
「そうだとして、どうすればいいんですか?今更、親を責めてもしょうがないし。」
赤ちゃんのお世話をしないわけにいかないし、わかっていたって、その感情を止められるわけではないですよね。
でも、自分が「我が子を愛せていないわけじゃない」という呪縛や罪悪感から離れれば、しんどい時期の子育てを自分だけでやるのではなく、ヘルプを求めることができます。
それまでの人生は特に精神的なトラブルなく過ごしてきた人が、子育てをきっかけに精神的に不安定になる場合、その成長の一時期に苦い体験をしてきた可能性があります。それでも日々親も子も成長していくので、その親御さんにとって、その一時は乗り越えられた「一時」なのです。ですから、しんどい時期も我が子とその一時が重なる限られた時期なのだと思われます。自分には赤ちゃんのことに過敏に反応する時期があるとわかったら、今のひと時は積極的に他の人を頼ろうと開き直って頂けるようお勧めします。
こうした現象はお母さんにもお父さんにもありえますが、不思議なもので、夫婦の両方ともが同じ成長の時期にそうした感覚をもっている場合は少ないようです。だからこそ、相手のざわざわした気持ちが理解できなかったりもするのですが、それはそれを利用するしかありません。ざわつくのがお母さんなら、なるべくその時期のお世話を、ざわつきがわからないお父さんに、おじいちゃんやおばあちゃん、保育士さんに委ねられるよう調整しましょう。全部が全部は無理でしょうが、自分がどうも赤ちゃんのこの時期は過敏になるみたいということを伝え、できるだけ協力して欲しいと相談してください。どうしても自分しかお世話ができない時は、1人でお世話をする時間を減らすように心がけましょう。ママ友と一緒にいる時間を増やすとか、実家に行くとか。お母さんほど気づきにくいですが、お父さんにもこうした過敏な時期はあります。どうも子どもを可愛がってくれないとか、泣き声にすぐ怒るとか、そういう反応になっているときは、今は苦手な時期なのかも…という見方もしてみて下さい。もう少し大きくなったら、抵抗なくお世話してくれるかも知れません。
成長過程のどの時期に、つまづきやしんどい体験があるのかは、人により様々です。成長して大人として過ごしてきた時間が長いと、遠い記憶として忘れられていますが、子育てを通じて思い出されてしまうこともあるんですね。
親としての試練なのかもしれません。
特に初めての子どもの育児の時には、参考にする育児のイメージが自分の幼少時代になってしまうので、一種のフラッシュバック現象が起きやすいのでしょう。
2人目以降の子育てが多少楽になるのは、昔の記憶を呼び覚まさなくても、1人目の育児体験を思い出せるからだと思います。
でも、2人目の方が自分になんとなく似てるところがあるから…と、1人目よりも転移現象が強く起こることもあります。
世代間伝達をしてしまわないためには、なるべく自分ひとりで子育てをしないこと。
実際にお世話をすることだけが子育てではありませんから、例えばお父さんが物理的時間的に参加できなくても、子どもに関する決定事項を委ねるとか、子どもの成長になるべくいろんな人を関わらせることで、世代間伝達の濃度が薄まります。
これが、別の家庭で育った他人同士が一緒になること「結婚」の意味なのかも知れないと思ったりもします。シングルの人もしかりです。「親」は何も生物学的な親だけが親ではありません。関わる人すべてが、お子さんの育ての「親」になるのです。いろんな人の力を借りて、1人の人を育てていきましょう。
一呼吸おきたい時、なんとなく話す人がいない時、カウンセリングを試してみて下さいね。
あなたにも、いろんな育ての「親」が必要な時があります。
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